2019年度シチズン・オブ・ザ・イヤーを受賞しました
2020/02/01、2020/11/22

オビラメの会はこのたび「2019年度シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

シチズン時計株式会社が主催し、「日本人および日本に在住する外国人の中から、市民社会に感動を与えた、あるいは市民社会の発展や幸せ・魅力作りに貢献した市民(個人もしくは団体)を1年単位で選び、顕彰する制度」(主催者サイトから)です。

2019年度シチズン・オブ・ザ・イヤーを受賞!

表彰式のひとこま。前列左から山根基世・選考委員長、川村洋司・オビラメの会事務局長。前列右端は佐藤敏彦・シチズン株式会社社長。(2020年1月30日、パレスホテル東京で)

オビラメの会の「2019年度シチズン・オブ・ザ・イヤー」受賞を記念して、書道家の武田双雲氏による作品が公開されました。(2020/11/20)

武田双雲書

授賞スピーチ

川村洋司・オビラメの会事務局長

みなさん、こんにちは。きょうは思いもよらない大変な賞をいただき、本当にありがとうございます。シチズン時計株式会社、そして選考委員のみなさまに心からお礼を申し上げます。同時に、この表彰式に際して、多大な尽力をいただいたシチズン時計株式会社の広報IR室および関係者の方々に心よりお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

さきほど選考委員長がご紹介くださったように、わたしたちの会のメンバーは、多くが釣り人です。「釣り人の話は半分に聞け」という言葉を知っておられますか。釣り上げた魚の自慢話をしているうちにだんだん魚が大きくなっていく、そういったホラ吹き集団なんですけれど(笑)、その釣り人たちが尻別川のイトウを守るぞと言って、2001年に「オビラメ復活30年計画」という大風呂敷を広げました。まさに「ミッション・インポッシブル(不可能指令)」の世界なんですけれど。

2019年度シチズン・オブ・ザ・イヤーを受賞!

尻別川のイトウは、わたしたちが活動を開始した時点で、すでに自然繁殖可能な環境が失われてしまっていました。もう、人工的に稚魚を放流しないと復活させることができない、そう判断をして、稚魚放流を始めることにしたのですが、この仕事を始めるにあたって、わたしたちがこだわってきたことがふたつあります。

ひとつは、わたしたちが増やそうとしているのは、単なるイトウではなくて、「尻別川のイトウ」だということです。そのためには、尻別川で生け捕りにした野生イトウを親魚として育てて、採卵をして、「尻別川固有の遺伝子を持つイトウ稚魚」を生産しなければなりません。「放流するのは尻別川固有の遺伝子を持ったイトウに限る」というのが、わたしたちのこだわりのひとつ目です。

もうひとつは、ただ単に、放流したイトウが大きく育ってまた釣れるようになればいい、というのではなくて、放流稚魚が、自力で子どもを残せるようにするということ。われわれが手を加えなくても、自分の力で世代交代していけるようにしよう、ということです。

このふたつのこだわりを持って、わたしたちは活動をしてきました。その結果、稚魚放流をした支流で昨年(2019年)、第2世代のイトウたち(放流魚の自然繁殖で生まれた第1世代が、また次の親になって自然繁殖し、新たに誕生した世代)の姿を初めて確認することができて、喜んでいるところです。ここまで20年かかりましたけれど、この成果をもとに、オビラメ復活30年計画の残りのあと10年で、今度は尻別川の全域にこれを広げていくことを目指しています。

わたしたちの最終ミッションは、イトウが尻別川じゅうで再生産できるようにして、わたしたちの仕事はもういらない、イトウのほうから「もう、おれたちに手を貸してもらわなくても大丈夫だよ」と言ってもらえる状態にすることです。そうなれば、わたしたちは必要なくなります。ですから、わたしたちの最終ミッションは「解散」なんです。それに向けてあと10年、活動していこうと思っています。

尻別川では2010年に、ほぼ20年ぶりに、(人工放流によらず)再生産を復活させた天然のイトウ個体群が見つかりました。その繁殖地には、1mをゆうに越える、すごく赤くなったイトウたちがのぼってきます。だれが見ても「これはすごいね」と感動する光景を、目の前で見ることができます。われわれだけが楽しむのはもったいないので(笑)、ぜひみなさん、一度見に来ていただいて、感動を共有してもらえたらと思います。

その現場での「見まもり活動」に加わるために、もう6年連続で、横浜から出張してきて、だいたい2カ月間、キャンピングカーに寝泊まりしながら滞在してくださっている奇特なおじさんがおられます。きょう、この会場に来てくれているのでご紹介します。大石剛司さんです(拍手)。

われわれが「見まもり活動」をしている川には、道道の橋が架かっていて、高さ数メートルの高さから、真下にイトウを見ることができます。それがもう、びっくりするくらい大きく見えます。『イルカに乗った少年・両棲人間1号』(ベリャーエフ)をご存知の方もおられると思いますけれど、「イトウに乗った少年」を書けそうなくらい。ぜひそれを見ていただけるとうれしいです。

尻別川のイトウ=オビラメは、尻別川の流域の人びとにとって守護神のような存在だと、わたしは考えています。「となりのトトロ」をもじって「となりのオビラメ」みたいな(笑)。いつまでも尻別川に健在でいてくださって、みんなを守ってくださる守護神、いつまでもそんな存在でいてもらえるように、今後10年、がんばっていきたいと思っています。今日は本当にありがとうございました。


選考委員会講評

山根基世委員長(元NHKアナウンス室長)

受賞者のみなさま、おめでとうございます。会場にお越しのみなさま、ようこそおいでくださいました。ありがとうございます。選考委員会の代表として、選考課程の様子などをちょっとお話しさせていただきます。

毎年のことですが、今年も本当に悩みました。選考委員長を務めて10年になるんですけれど、今まででいちばん長引きました。紅白歌合戦じゃないんですけど、男性軍と女性軍が対立するということもあったり、投票し直したり……。みんな議論を尽くして選び抜かれたのが、きょうおいでいただいた、3つの活動をなさっている方たちです。

つくづく思ったのですが、日本という国は、政治はどうあれ(笑)、こころざし高い市民のみなさんが、こころざし高い活動をすることによって支えられているんだなあということを実感しました。それくらい、すばらしい活動がたくさんありました。

まずオビラメの会。イトウって魚は、釣り人にとっては本当に魅力的だそうですね。大きくて、引きが強くて……。わたくしも一回、アラスカでサケを釣ったことがあるんです。イトウってのはさぞすごいと思うんですけど。そういう釣りをなさっている方たち本人が、イトウを守る活動に取り組んで20年。その間に人工採卵・人工受精・人工孵化させて、稚魚を育てて放流、それを繰り返して、もう第2世代まで自然孵化するところまで至っているという。本当にこれ、口で言うのは簡単ですけれども、ものすごく高度な技術と知識と強い熱意・意思、そういうものを集積しなければ決して到達することのできない結果だろうと思います。本当にすばらしい活動です。

グレタ・トゥンベリさんの登場以来、地球環境に対する関心が高まってますけれども、足下にある、自分のすぐそばの環境を守ることこそ、地球環境につながる第一歩ではないかと思います。その活動の実践者で、本当に素晴らしい活動として、わたしたちは感動しました。

個人的な感想ですけど、わたしはこの活動の記事を読んだ時、すぐ思い浮かべたのが、『あらしのよるに』(作:きむらゆういち、絵:あべ弘士)という童話でした。ご存知の方も多いと思います。嵐の夜、真っ暗な小屋にヤギが避難していると、そこに、風邪を引いて鼻の利かなくなったオオカミが入ってきて。互いに相手の正体を知らないまま、会話を交わしていくうちに二人の間に友情が芽ばえて、ヤギを愛してしまったオオカミは、もうヤギを食べることができない──っていうお話なんですけど。オビラメの会の方々がオオカミ、って言ってるわけじゃないんですけど(笑)、ホントは釣りたい人たちなんですよね。それが、イトウを守るための活動をこれだけ必死に続けてきて、釣りに来る人たちに釣りを自粛してもらう側に回るっていうのは、何かわたくしは、心温まるメルヒェンを読むような気がして。「こういうの好きだなあ」と思いました。(略)

今後ともがんばってください。おめでとうございました。


主催者のサイト

シチズン・オブ・ザ・イヤー