イトウ保護のためのアンケート「尻別川の釣り人たちに聞きました」
2002, 2017/07/26
「パタゴニア・インターンシップ・プログラム」を利用している間、尻別川水系で釣りをしている釣り人にアンケート調査を行ないました。アンケートにご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました。この場をお借りして、お礼申し上げます。(玉井秀樹、オビラメの会理事)
調査者 玉井秀樹(オビラメの会会員、パタゴニア大阪勤務)
調査期間 2002年5月10日 〜 7月9日
調査対象者 尻別川で実際に釣りを行なっていた釣り人(川で会った人)
もしくは、尻別川で釣りをおこなったことがある人(町で会った人)
有効回答者数 86名
Q1. どれくらいの頻度で、尻別川で釣りをしますか?
週3日 | 70% |
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週2日 | 11% |
週1日 | 11% |
月2日 | 16% |
月1日 | 21% |
年2日 | 8% |
年1日 | 10% |
そのほか | 16% |
一番多かったのは「月一日」の割合で釣りに来ている人たちだったが、少なくとも週一で釣りに来ている人は、全体の約三割を占めた。流域の釣り人も多かったが、札幌や小樽などの近郊都市部からやって来るウィークエンド・アングラーが目立った。
Q2. 尻別川で釣れる魚のうち、好きな魚はなんですか?
イワナ | 5% |
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アメマス | 2% |
イトウ | 24% |
ニジマス | 35% |
ブラウントラウト | 2% |
ヤマメ | 29% |
そのほか | 3% |
予想通り、ニジマスの人気が一番(35%)。ついでヤマメ(29%)、イトウ(24%)と続く。ご存知の通り、尻別イトウはほぼ絶滅寸前で生息数もほとんどゼロに近いとされているため釣れる確率は限りなくゼロに近いが、それでも釣りたいという複雑な釣り人の心理を表す結果となった。個人的には、イトウと競合するニジマス(イトウと交雑したり、イトウの卵を食べたり、イトウの稚魚の生息域を占領したり等々)の人気が高いことが気になる。
Q3. イトウが絶滅危惧種であることを知っていますか?
知っている | 98% |
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知らなかった | 1% |
無回答 | 1% |
ほとんどの人が、「知っている」と回答。釣り人の間では、イトウが絶滅危惧種であることはほぼ浸透しているようだ。
Q4. 尻別川でイトウを釣ったことがありますか
ある | 16% |
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ない | 79% |
無回答 | 5% |
16%もの人が、「尻別イトウを釣ったことがある」と回答。ただし、そのほとんどが20世紀中の出来事で、しかも近年になるにつれてその数は激減している。22世紀の釣り人にイトウを釣るチャンスがあるかどうかは、今の時代を生きる我々全ての人の行動にかかっている。
Q5. イトウが釣れたらリリースしますか
する | 79% |
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しない | 15% |
無回答 | 6% |
リリースがイトウの資源保護につながることを理解している人が増えてきている。ただし、珍回答もあり。「する」と答える人は持続可能な釣りをするためにそう答えたと思っていたが、中には「食べてもうまくなさそうだから」「食べ方がわからない」等々、食に関して会わないからという回答が5件もあった。「しない」のリリースしない人は自分のためにKEEPするのではなく、どこの研究機関にもない尻別イトウの卵を確保するために、「オビラメの会」に協力するためという理由が10件あった。
Q6. イトウに悪影響を与えていると思うものを、順に選んでください。
ダムや堰堤 | 41% |
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コンクリート護岸 | 27% |
河畔林の伐採 | 9% |
釣り人の乱獲 | 6% |
農薬等の化学物質 | 6% |
森林伐採や道路工事に伴う土砂の流入 | 6% |
そのほか | 5% |
公共事業による河川改修がイトウに多大な影響を与えていることは疑いようがない。行政に対応を求めていくことが不可欠。その一方で、自らを反省する釣り人も6%存在。次の行動へ期待したい。
Q7. 尻別川にブラックバスは必要ですか?
必要 | 0% |
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必要ない | 99% |
無回答 | 1% |
本州以南で大問題になっているブラックバス。いないはずの道内でも、昨夏大沼で見つかったり、書店でバスの雑誌が売られていたり、TVでバス釣り番組が放映されたりしているため、バス関係者(バサーや業界も含む)に対する警戒感や不信感をあらわにする釣り人が非常に多かった。アンケート結果は良識ある結果だとおもう。密放流をさせないためにも、今後も「バスは要らない!」ということを北海道の釣り人はしっかりと発信していく必要があるだろう。
Q8. 尻別イトウを絶滅させないために何か行動を起こしたいと思いますか?
思う | 77% |
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思わない | 17% |
無回答 | 6% |
環境問題全般にいえることだが、解決の道は「行動を起こす」こと以外にない。77%もの人が、このような答えを持っていることは大変頼もしくおもえた。全ての人が「できる範囲で、できることをやっていく」ことが大切。今後の釣り人の行動に注目したい。
Q9. イトウ釣りに規制は必要ですか
/必要だとしたらどんな規制が必要でしょう?
必要 | 78% | 禁漁区設定 | 26% |
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禁漁期設定 | 30% | ||
尾数制限 | 11% | ||
体長制限 | 23% | ||
そのほか | 10% | ||
必要ない | 15% | ||
無回答 | 7% |
イトウを保護するために、もはや「人の良心」や「モラル」だけに頼ることができない今、実効力のある法的規制が必要であることを多くの釣り人が認めている。
かなやま湖での規制が効果をあらわしていることが知られ始めたためか、「禁漁期間」、特に産卵期の規制が、最も必要な規制であると釣り人は考えている。
地域によって違うことはありえるが、研究者の意見に充分耳を傾け、「禁漁区」や「体長制限」などもあわせた複合的な規制をおこなうことが必要だとおもわれる。
Q10. 尻別川にライセンス制は必要ですか
必要 | 35% |
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必要ない | 59% |
無回答 | 6% |
ライセンスの導入が必要だとおもわないという答えが半数を大きく上回り、59%を占めた。この理由は大きく分けると二つあるようで、一つは、「釣りをするためにお金を払いたくない」という、本州以南の釣り人には理解しがたい考え。もう一つは、払ったお金がなにに使われるかわからないという、管理団体(行政や漁協?)に対する不信感がその理由のようだ。
Q11. 行政が積極的にイトウの保護をするべきだと思いますか?
思う | 85% |
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思わない | 14% |
無回答 | 1% |
なんでもかんでも行政に任せてしまうことには賛成はできない。しかし、国民(または地域住民)の共有財産である野生生物、なかでも絶滅危惧種に関しては、今の国民からの要望があろうがなかろうが行政が積極的に保護をすべきだとおもう。
Q12. 尻別イトウの保護活動をおこなっている草の根団体「オビラメの会」を知っていますか?
知っている | 58% |
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知らなかった | 41% |
無回答 | 1% |
半数以上の約6割が、当会の存在を知ってくれていることを素直に嬉しくおもう。一人でも多くの方が、会の活動に参加してくださることを願っています。
「オビラメの会」は「パタゴニア」と「パタゴニア大阪」のサポートを受けています。