2022/03/06
当会は、1996年の設立以来、絶滅危惧種イトウ(サケ科)尻別川個体群の復元を目標に掲げて活動しているNGOです。私たちは「オビラメ復活30年計画」(2001~30年)に基づき、地元のボランティア住民や釣り人を中心に、生態学者、河川技術者といった専門家、また関係自治体や河川管理者など関係機関と協働で、多くの財団や企業の支援のもと、尻別川流域でイトウ繁殖地の再生などを成し遂げてきました。
この流域では、2010年代後半からリゾート地としての開発が活発化し、地価高騰や入り込み人口の急増を招くとともに、山岳地域でも水辺地域でも、大小たくさんの新しい店舗やホテルや住宅、工場などが建ち、道路網が作られました。もともとの美しい景観が大きく変化しただけでなく、工事にともなう表土や汚水の流出や、人口増にともなう生活排水による河川の汚染が、地域の水環境にとって大きなリスクになってきました。新型コロナウィルスのパンデミックが起きた2020年以降も、開発の勢いは衰えていません。
かつて尻別川にたくさん生息していたイトウを、絶滅の危機に追い込んだ最大の理由は、1970年代以降の急激な河川開発による生息地破壊でした。私たちは、当時の過ちを二度と繰り返したくありません。
「オビラメの会」は、尻別川に生息するイトウたちの代弁者として、流域の開発に関与するすべての個人と企業・団体に対して、次の4つの「イトウからのお願い」を届けます。
- イトウを頂点とする尻別川の自然生態系に、つねに敬意を払ってください
- イトウの生存や繁殖を絶対に脅かさないでください
- この地域の生物多様性について情報収集してください
- オビラメの会と連携して最善策を選んでください
北海道自然環境課「希少魚種イトウ保護のために」
北海道自然環境課・特定生物グループは2009年3月、「希少魚種イトウ保護のために」と題するリーフレットを発行して「産卵期である3月から5月の期間は、遡上する河川の中上流や産卵場所でのイトウの保護にご協力ください」などと呼びかけています。
「尻別川連絡協議会」を構成する尻別川流域の7つの自治体(蘭越町、ニセコ町、真狩村、留寿都村、喜茂別町、京極町、倶知安町)は、尻別川統一条例(2006年)をもち、「日本最大の淡水魚であるイトウをはじめとする希少な生物に対する保護について特に配慮する」(第17条)と定めています。