尻別イトウの健康診断
2022/11/05
健康診断のバロメーター
イトウ個体群の健全度/絶滅危険度を診断するバロメーターは、「自然繁殖地の数」と「繁殖親魚の個体数/産卵床数」です。(→川村洋司氏「イトウ資源がどうなっているか知っていますか 」)
カテゴリー | 具体的要件 |
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1 絶滅危機個体群 | 再生産が確認されないかもしくは個体群全体で確認される産卵床数が10未満 |
2 希少個体群 | 個体群全体で確認される産卵床数が30未満で、かつ1~2本の支流に限定される |
3 留意個体群 | 個体群全体で確認される産卵床数が60未満で、数本の支流に限定される |
4 安定個体群 | 個体群全体で確認される産卵床数が60以上で、多くの支流で産卵が行われる |
「オビラメの会」は1996年の発足当初から、科学的なモニタリング(観測)によって、尻別川イトウ個体群の健康状態をチェックしています。
自然繁殖地はわずか2カ所
集水面積1640平方キロ、280本あまりの支流を擁する尻別川流域にあって、イトウの自然繁殖が確認されている場所は、2021年現在、中流域にわずかに2カ所だけです。
このうち1カ所は、「オビラメの会」が2004年から再導入実験をおこなっている倶登山川(倶知安町)の繁殖地です。再導入した人工孵化魚の生き残りが順調に成長し、2012年春に放流魚による自然繁殖が初確認されました(→プレスリリース「絶滅危惧種イトウ(サケ科)の再導入実験に世界で初めて成功しました」)。
倶登山川ではその後、自然繁殖が毎シーズン確認されています。2019年には、自然繁殖で生まれた野生イトウによる自然繁殖が初確認されました(→オビラメの会ニューズレター第50号/2019年6月)。
もうひとつのイトウ自然繁殖地(河川名非公表)では、2010年春、この支流としてはほぼ20年ぶりにイトウの自然繁殖が再開しているのが確認されました。人工放流にいっさい頼らない唯一の自然繁殖地であり、非常に貴重な環境です。「オビラメの会」は2011年以降、イトウの繁殖期に合わせて、地元自治体や河川管理者と協働しながら、この繁殖地で24時間体制の「見まもり隊」活動を実施しています。(→イトウ見まもり隊)
尻別イトウは「希少個体群」
オビラメの会のモニタリングにもとづき、個体群の健全度/絶滅危険度を4段階で評価する指標に照らすと、2021年現在のイトウ尻別川個体群は、危険度が2番目に高い「希少個体群——個体群全体で確認される産卵床数が30未満で、かつ1~2本の支流に限定される」にあたります。
「イトウ繁殖地見まもり隊報告会2022」(2022年7月9日、倶知安町文化福祉センター)から。