2年連続で人工授精に成功/昨シーズンの2倍量
2004/5/7、2017/10/11
「デカ」から1万2400粒を採卵
「尻別川の未来を考えるオビラメの会」(草島清作会長)は2004年5月7日、北海道倶知安町内で飼育中のイトウ親魚の採卵作業に臨み、昨シーズンに引き続いて、尻別川産イトウ=オビラメの人工授精に成功した。
作業にはオビラメの会会員ら約10人が参加。北海道立水産孵化場から川村洋司さん、小出展久さんの専門家二人も駆けつけた。水門を調整して飼育池の水位を下げ、飼育中のイトウ(4匹)を3人がかりですくい、担架で運んでいったん別の水槽へ。改めて一匹ずつ取り上げ、麻酔液を溶かし込んだ別の水槽に移して、麻酔状態になったことを確認してから、採卵・採精作業をおこなった。
4匹のうち、「ノリカ」(75cm、雌)と「チョースケ」(80cm、雌)は、よく太って健康そうなものの、成熟は見られなかった。しかし、体を朱色に染めた「チビ」(83cm、雄)は、小出さんが指で腹部をしごくと、勢いよく精液が飛び出た。量はおよそ2.5ccだった。
最後は、飼育しているうち最大の「デカ」(117cm、雌)。昨年、「オビラメの会」に初めて採卵成功をもたらした「幸運の女神」だが、彼女が毎年抱卵するかどうかは、やってみなければ分からない状況だった。しかし、麻酔をかけてタオルで目隠ししながら、3人がかりでトライしたところ、ふくよかな腹部からボウルに向けて、まるでマシンガンの弾が飛び出すように大量の卵が飛び出してきた。同時に、メンバーたちから大歓声が上がったことは言うまでもない。
絞り切ったところで卵を特殊な「体腔液」で洗浄し、すぐに「チビ」の精子と授精。真水と一緒にビニール袋に封入し、恵庭市の道立水産孵化場に運搬された。
川村さんの測定によれば、今回の採卵数は約1万2400粒。昨シーズンのほぼ倍だ。受精卵は同孵化場の「立体式孵化器」内で成長し、6月上旬ごろに発眼する見込みだ。
(写真撮影/鈴木芳房、文/平田剛士=オビラメの会会員)
飼育池管理を担当する高橋秀邦・事務局次長の話
この「デカ」は去年、尻別川で釣り上げられた時にすでに抱卵していたが、1年間飼育した後の今回、その倍もたくさんの卵を抱いていたということは、飼い方が間違っていなかったことの証明だと思う。餌の準備など、ほんとに大変ですけれど、「やったー」という感じで、うれしいです。卵を採った「デカ」もほかの親魚たちも、元気に回復しました。
(オビラメの会ニューズレター18号から)