イトウ稚魚放流報告会「喜茂別にイトウふたたび」

2022/02/25、2022/03/28

イトウ稚魚放流報告会2020/喜茂別にイトウふたたび尻別川の未来を考えるオビラメの会は、国際自然保護連合再導入指針などに準拠しながら、喜茂別町役場など関係機関と協働で、2020年と21年の秋、絶滅危機種イトウ(サケ科)尻別川個体群の親魚たちから得た人工孵化稚魚計6214尾を、同町内の尻別川水系支流に初めて放流しました。町内外のみなさまに詳細をお知らせすべく、下記要領で報告会を開催します。

※この報告会は、当初2020年11月に開催予定でしたが、感染症拡大のため延期していました。

【日時】2022年3月26日(土曜)14:00~15:10
【会場】喜茂別町農村環境改善センター 喜茂別町字伏見264-4
【報告者】川村洋司 オビラメの会事務局長
【入場料】無料。お申し込みは不要です。感染症抑制のため、尻別川流域のみなさま限定です。不織布マスクの着用など、感染症対策をお願いします。
【主催】尻別川の未来を考えるオビラメの会 電話090-8279-8605(川村洋司事務局長)
【協力】きもべつ歴史プロジェクトの会KHP
【後援】喜茂別町教育委員会


会場での質疑応答から(要旨)

会場から
イトウの稚魚を放流しイトウが復活した場合、尻別川全体としての水中昆虫やイトウの餌となる魚類は、生態系として支えられるだけの量があるのだろうか?この20〜30年来の尻別川は、水中昆虫も魚族も非常に減少しているように見えるが。

オビラメの会事務局長 川村洋司さん
原因ははっきりとはわからないが、そのような現象は確かに見られるようになった。その対策は今後必要になってくると認識している。

司会(きもべつ歴史プロジェクトの会KHP 梅田滋さん)
河川改修などもその原因と認識していいか?

川村洋司さん
河川改修工事の工法も最近は改善されてきたが、自然生態系にとって劇的に良くなったと言えるほどではない。もう少し良くする方法を考え提案していきたい。

会場から
喜茂別小学校では、三年生の総合学習として、イトウが住める河川環境を学ぶ取り組みをしたいと考えている。KHPとオビラメの会の協力を得て一緒に活動していきたい。

川村洋司さん
河川生態系維持に向けた取り組み主体として、子どもが次世代の取り組みを担っていくことは素晴らしいことなので、全面的に協力したい。

会場から
喜茂別の青年交流セミナーでは川のアクティビティとして子どもたちを対象に川下りを行っているが、その中で自然生態系を守ることも実践的に学んでいきたい。何かアドバイスして欲しい。

川村洋司さん
尻別川でどんな魚がいるのか水中昆虫がいるのか、釣りや川遊びなどを通して体験し知っていくことが、将来の河川環境保全活動に結びつくと思う。

司会
これまで二年間放流してきたイトウの稚魚は、あと5年ほどで母川に回帰してくるが、その場合、途中にもう使われていない頭首工があって遡上の障害になっている、というお話があったが、この点について個人的な意見でもいいので、どなたか。

会場から
自分は役場職員だが、頭首工が障害となっていることは認識している。今後の様々な事業メニューを活用して再生可能エネルギーとしてのマイクロ水力発電の事業など導入し、頭首工と魚道と組み合わせることも可能ではないか。

司会
稚魚放流によるメリットとデメリットについての質問がかつてなされたことがあったが、改めてその問題提起をして欲しい。

会場から
イトウが戻ってくる場合のメリットとして、観光資源として利用する方法はないか?

川村洋司さん
イトウ釣りは非常にダイナミックなアクティビティなので、尻別川流域のようにアクセスしやすい環境としては、海外からの観光客に向けても大きな観光資源として訴求でき、経済的メリットは少なくないと思う。特に、夏場の観光対策としても有望だ。しかし、オビラメの会としてはそのことを考えて活動しているわけではない。観光資源となる場合の自然資源保全の観点も十分に考えながら、地域全体で取り組むことは良いと思う。

司会
オビラメの会では、釣り人へのお願いとして「イトウからのお願い」というキャンペーンも始めていますね。今後に向けて、オビラメの会として喜茂別町民に向けたメッセージやお願いがあれば。是非どうぞ。

川村洋司さん
「喜茂別のイトウ」が戻ってくる、という発想から、地域としてイトウのことを知り触れ合う機会を作って欲しい。また、頭首工をイトウが越えられるような「手作り魚道」をみんなで考案し作るとか、課題を超えていく知恵や工夫に地域の人たちも参加してこの問題を私たちと一緒に考えて欲しいと思う。

司会
喜茂別川の放流地点、オロウェンシリベツ川の放流地点に影響がありそうな後志総合振興局による河川改修工事が新年度に予定されているが、そのことへの対応などについては?

川村洋司さん
そのような工事が本当に必要なのかという疑問を担当役所に率直にぶつけることが大切だ。これまでも対応してくれることもあったので、住民と一緒にオビラメの会も提案していきたい。振興局とオビラメの会は毎年3月ごろ、そのような話し合いを行なっているので、地域からの要望もそこで反映していきたい。

会場から(オビラメの会副会長 山根敏夫さん)
オビラメの会としてイトウの産卵状況を毎年観察しているが、その光景には毎年感動する。その感動する光景があと数年で喜茂別でも見られると思うので、春とともに戻ってくるイトウを、喜茂別の地域を上げて迎えるような取り組みを期待したい。河川工事や頭首工の問題についても、地域住民が声をあげると成果が期待できるので、ぜひ一緒に取り組みたい。

会場から(オビラメの会会員 井手道雄さん)
冒頭で質問された方が話していたように、尻別川全体の生態系の豊かさの減退は、今後イトウが復活してくるにつれて大きな課題となってくる。どうしたら、尻別川の生態系全体を豊かにできるか、他の河川での取り組みの成功事例なども参考にしながら、地域住民や役場や関係機関と一緒にオビラメの会でも考えていきたい。その場合、たとえば猿払村のケースだが、村長が自身の責任で決断を下し、頭首工の魚道化に大きな道をつけたという成功事例がある。喜茂別の頭首工の課題解決についてもそのような可能性に期待しながら、オビラメの会も地域のみなさんと一緒に取り組みたいと思う。また、学校との総合学習においては、倶知安小学校での経験があるので、ぜひ協力したい。

司会(梅田滋さん)
イトウ復活をきっかけにして尻別川の河川環境全体を考えていくことは、地域の私たちの主体的な課題なので、オビラメの会と一緒に取り組むことが求められている、というお話がたくさんの方から出されました。最後に、きもべつ歴史プロジェクトの会の斉藤代表からご挨拶を。

きもべつ歴史プロジェクトの会KHP代表 斉藤久さん
アイヌと共に尻別川を歩いた松浦武四郎の記録の中に、イトウの記録が残っている。チライベツやへタヌやチポプラなどが、その記録が残っている地名である。さらに、これまで喜茂別町内でもイトウが釣れた記憶が町民の中にまだ残っているので、きもべつ歴史プロジェクトの会も住民の皆さんと共に、イトウ復活に向けてオビラメの会と一緒に活動していきたい。

写真と記録 梅田滋


プレスリリース