イトウ復活大会議2006「尻別イトウを幻の魚にするな」野田知佑氏
2006/3/4、2022/04/22
当会にとって4年ぶりとなるイトウ保護のためのフォーラム「イトウ復活大会議」が2006年3月4日、カヌーイストの野田知佑さんを基調講演者に迎えて開かれました。来賓の佐藤隆一ニセコ町長をはじめ、熱心なイトウファンたちが集合。絶滅危機種を救うために何が出来るのか、熱心な議論が交わされました。(写真・鈴木芳房、まとめ・平田剛士=オビラメの会)
【基調講演】「尻別イトウを幻の魚にするな」野田知佑氏
カヌーイスト、作家の野田知佑さん(2022年3月27日ご逝去)の訃報に接し、オビラメの会一同、心より哀悼の意を表します。野田さんは、当会主催の「イトウ復活大会議2006」(ニセコ町)での基調講演で、「尻別イトウを幻の魚にするな」と、私たちを力強く激励くださいました。ご冥福をお祈りします。(2022年4月2日)
日本の国交省というのは、川の深いところは埋めたがり、曲がったところは直線化したがる、そういう役所です。たとえば熊本県の川辺川、非常に美しい川です。きれいなだけでなく、夏は水温が25度くらいあって、一日中浸かっていても疲れません。岩の下にアマゴとかアユとかたくさんいて、いくらでも手づかみできます。子どもたちなんか、いったんこの川に入ると一歩も出てこなくなる。魚が捕れて楽しいからです。冬はコイを抱き取りで捕ることもできる。こんな川辺川に国交省はダムを建設していて、反対運動で凍結されていますが、もう8割方完成してしまっています。
徳島県の吉野川の第10堰も、これもいまは反対運動によって凍結状態ですが、何かあれば国交省はすぐ復活させるでしょう。
長良川の河口堰が建設されたときは、北海道から鹿児島まで、この工事はオカシイと考えた人が全国からやってきてカヌーでデモをやりました。河口堰問題は、それまで新聞の県内版にしか載らなかったのが、このデモのおかげで全国区になりました。全国から反対の声が上がると、役所も気にします。さんざん交渉をやって、しかし国交省は河口堰を完成させてしまいました。われわれが予想したとおり、シジミは全滅した。でも役所は認めようとしない。国が悪いことをやっているわけで、非常に残念です。
日本では、自然を守ることが反国家、反権力運動になってしまう。ぼくらはただきれいな川を子孫に残したいだけなのに、それが反国家的になってしまうというのは、これはやっぱり国のほうが悪いと思うんです。地方に行くと、国家に反対することにはまだ抵抗があるというところもありますが、悪いことは悪いんだと、自信を持って反対すべきだと思います。それが民主主義であって、もっと声が反映されなければ。
ほかの先進国なら、50人の反対があればもうやれません。たとえばニュージーランド、きれいな渓谷が残されています。あそこは原子力発電を拒否していて、水力発電が中心ですが、それでもいい川はちゃんと残している
尻別川でも、せっかく今回こうしてたくさん集まったんだから、きっといい案が出ますよ。吉野川の河口堰計画凍結は、全国で初めて住民側が国交省に勝ったんですが、最初たった4人で始めた運動です。ゆうべ、オビラメの会のみなさんと遅くまで議論して、その熱っぽさに、じつに感動したんです。きっと何かができますよ。
photo by Suzuki Yoshifusa