イトウ再導入支流はいづこ
2009、2017/10/13
藤原弘昭(オビラメの会会員)
平成21年2月7日土曜日、後志支庁が施工中の倶登山川落差工魚道を見学後、新たな稚魚放流河川を求めて探索に向かった。
<河川の管理区分について>
尻別川は一級河川であるが、一級河川の中でも尻別川のように主要な河川には国土交通大臣が管理(開発局管理)する指定区間外区間(以下:直轄区間)がある。尻別川の場合は、その上流に知事が管理(土木現業所管理)する指定区間があり、さらに上流は町村長が管理する普通河川がある。
尻別川は、河口から24.2km(豊国橋)までが直轄区間、そこからさらに87km(旧大滝村字愛地)までが指定区間となっている。
逆川から下流側の支流にも一部直轄区間がある。支流の中で指定区間があるものは第一支流のみでも33河川ある。その他の支流や指定区間より上流は普通河川となっている。
探索開始
探索候補河川は、土木現業所真狩出張所が魚道事業を計画しているA川、B川、C川を予定。まずは一番近いA川に向かった。
A川
草島会長によると、この川は昔イトウが産卵遡上しており、その名のごとくイトウの産卵に適した良好な礫質河床であったそうである。
会長の案内により、やや上流部の町道橋に到着した。橋の上から川を覗くと、「ムムム……」何とも微妙な流れ。雪に覆われていて明確には分からなかったが、おそらく連結ブロックの3面装工と思われ、一定勾配の細い流れであった。河床はコンクリートブロックが礫に覆われており、礫の供給はあるようだが、藻の繁茂が旺盛で、その状況から推測して水質が心配された。藻類はどこの水辺にも繁茂しているものだが、家畜糞尿や肥料などに含まれる栄養塩(特に窒素・リン酸)が多く溶け込んでいる河川には多種の藻類が旺盛に繁茂し、それが枯死するとヘドロ化して酸素を大量に消費するため川が酸欠になる(海で言う赤潮)。会長いわく、河川沿いにある農地からの汚水が影響しているらしい。
そこから少し下流にある橋にも行ってみたが、「あちゃー……」見事な? 積みブロックによる3面装工(凹に近い断面)。水深は10cm程度で、無機質な流れが相当な延長で続いていた。もはや川ではなく、排水路。親魚が遡上できる環境としては限りなくダメに近い状況であった。よって、適否判定は「否」と言わざるを得ない。
昼食は吉岡事務局長のお店『まぐろ屋十割』。『ライズ』から変身? 進化? し、十割手打ち蕎麦にこだわったおそば屋さんだ。このとき食べた蕎麦とミニまぐろ丼のセットにはまいった。「うめ~~!」まさに絶品。見かけはちょっと怖い事務局長だが、お蕎麦は繊細な作品に仕上がっておりました。
さて、本題に戻るが、この昼食タイム中に私が「蘭越取水堰より下流(ダムの影響を受けずに遡上降河できる)を探索したい」と提案したところ、会長がそのあたりの河川(昔の産卵河川)を教えてくれたことから予定を変更し、蘭越町のD川とE川を見ることとなった。(※蘭越取水堰は河口から18.65kmで直轄区間)
というわけで次に向かったのはD川。
D川:普通河川
この川は落差工等が無く、ほぼ自然河川の流況であった。しかし勾配がきつい。河川内には人頭大~1m内外の巨石までが点在し、小段状の落ち込みが連続している。産卵に適した瀬が非常に少ない印象だ。産卵河川としてはごく少数の親魚しか許容できないと思われ、産卵したとしても稚魚の生息環境が極めて少ないことが懸念される。適否判定は微妙なところ(「否」に近い?)。
E川:合流点から0.6kmまで指定区間
みんなで橋から川を見下ろす。「おっ! ここの方がいいかも」と、モニタリングリーダーの大光明宏武さん。確かに河床の礫がいい感じ。橋の下流側に落差工(帯工)が数カ所見えるが、魚道を整備できれば期待が持てる。ちなみに橋は合流点から0.8~0.9kmほどであるから、見えている落差工の場所は普通河川区間である。
そこで、さらに上流部へ。合流点から1.5kmほどの地点にある民家で除雪区間終了。そこに車を停めて川沿いを歩き、川の状況を確認した。流れは比較的おとなしく礫の粒径も良さそうだが、イトウが産卵できる広さの瀬が見あたらない。大光明さんの判定では「サクラマスの産卵適地ではあるが、イトウにはちょっと狭い」そうである。だとすると、イトウの産卵可能区間は合流部から1.5km以内ということになる。この川はさらに詳細調査を行って適否判定をしたい。
規模的には小さいが、今回見た中では最も評価が高い川であった。
探索した3河川以外でF川の名前もあがったが、今回は素通りした。この川は合流点から1.2kmまで指定区間であり、その地点にため池があることから水温・水質ともに適さないのでは? という私的推測を持っているのだがどうだろうか。(一般的にダムやため池は水温が上がりやすく、また、止水のため栄養塩が溜まりやすい)
2日目の8日朝、G川方面に向かおうとしたが、吹雪のため会長判断で中止となった。
以上で今回の探索会は終了したが、今後範囲を広げて探索を行い、さらに適した河川を探したいと考えている。
ガキの頃から憧れていた尻別川の復活を願って……
(写真撮影・平田剛士)