イトウ保護のための宣言

2002, 2022/01/05

「北海道イトウ保護フォーラム2002 in ニセコ」を機に設立された「イトウ保護連絡協議会」による「イトウ保護のための宣言」文です。イトウ保護連絡協議会の設立会には、「斜里川を考える会」「猿払村商工会青年部」「朱鞠内湖淡水漁業協同組合」「南富良野町役場」「尻別川を考える オビラメの会」が参加しました。

宣言を読み上げる江戸謙顕氏
宣言を読み上げる江戸謙顕氏

これまで、北海道内のイトウは年々その数を減らしていると危惧されてきました。レッドリストにも絶滅危惧種として記載され、絶滅が憂慮されてきましたが、その実態については、正確に調査されることはありませんでした。しかし、一部の研究者やイトウ釣り師らによる最新の報告から、北海道のイトウが今まさに重大な危機に直面しているということが、あらためて明らかになってきたのです。

北海道内の多くの水系において、イトウはすでに壊滅的な状態にあるといっても過言ではありません。開発の進んでいる道央、道南の河川において絶滅が相次いでいるのはもちろんのこと、かつては分布の中心と考えられていた道東地方においても、ほとんどの河川で繁殖は確認されていません。かろうじてごく少数の安定した個体群が道北地方などで確認されましたが、それらとて決して安泰ではありません。生息地の破壊や乱獲など、イトウの存続を脅かす様々な問題が、それらの地域においても確実に進行しているからです。

イトウは河川の最高次捕食者であり、豊かな河川生態系の象徴的存在です。イトウを保護することは、流域全体における多様な河川生態系そのものを保護することと同義です。また、地球上にイトウが現れてから、すでに1千万年が経過しているといわれています。この途方もない時間、連綿と世代交代を繰り返してきたイトウを、わずか数十年で滅ぼそうとしている我々の行為は、倫理的にも許されるものではありません。さらに、イトウは世界的に見ても希少種です。イトウを保護することは、我々日本国民だけでなく、全世界からも課せられている責務なのです。

以上の内容を踏まえつつ、激減しつづけるイトウを何とかしたい、という思いから、今回、イトウ保護連絡協議会が設立されました。イトウ保護連絡協議会とは、道内の各地域においてイトウの保全に関わっている団体、組織、グループが、情報交換をし、互いに互いの活動をバックアップしあい、時には行動を共にして、北海道のイトウ保護活動に積極的に寄与していこうという、イトウ保護組織の連合体です。イトウ保護連絡協議会は、以下のことを宣言します。

  1. イトウ保護連絡協議会は、北海道のイトウが今まさに激減し絶滅の危険にさらされていることを認識し、イトウを絶滅させることなく次世代へと伝えていくために、積極的に保護活動をおこないます。
  2. イトウ保護連絡協議会は、イトウを河川生態系の象徴として捉え、本種の保護活動を通じて、本種のみならず流域全体の多様な河川生態系の保全に寄与していきます。
  3. イトウ保護連絡協議会は、各地域におけるイトウ保護活動を通じて、河川と地域社会との健全な関係を模索し、もって自然環境に配慮した、地域社会の健全な発展に寄与していきます。

(2002年10月13日、「北海道イトウ保護フォーラム2002 in ニセコ」会場で宣言)