希少種条例を尻別イトウ復元に役立てるには

2008/06/21, 2017/08/09

川村洋司・北海道立水産孵化場主任研究員

川村洋司氏北海道希少野生動植物の保護に関する条例は、国の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の北海道版と言うべき条例で、2001年に制定されました。対象となる生物種を指定して保護対策を取るというスタイルですが、道の指定希少種選定委員会がいま新たな候補種を絞り込んで、イトウが最終候補に残ったところです。

もし指定されると「採捕禁止」になりますから、釣り人のみなさんの心配のタネもそこにあると思いますが、イトウの場合は、従来の「種指定」ではなく、「地域個体群指定」でやれないか、という方向で議論が進んでいます。

イトウに限らず、希少な野生生物は「採捕禁止」だけではなかなか保護できません。生息環境を良好な状態に保ってやる必要があります。条例は「生息地等保護区」についての条項もあり、「必要な場合には」との断りつきですが、厳しい順に「立ち入り制限」「管理地区指定(許可制)」「監視地区(届け出制)」のエリアを設定できることになっています。

また条例では、対象種ごとに保護管理事業計画を立て、事業結果のモニタリングを続けてやりかたを修正しながら対策を続ける「順応管理」方式を採用しています。

さて、この仕組みを仮に尻別川のイトウに適用する場合、次のような点を考慮する必要があると思います。

指定対象を「尻別川のイトウ個体群」と名付けたとして、流域全体でやるのか、それとも下流・中流などと地域を分けて指定するのか。

特定の保護区を設けて個体群の再生を図ることにするなら、例えばいまオビラメの会が倶登山川で放流実験を進めているように、重点地域を決めてやっていくのがいいかも知れません。

また漁獲規制をかけるとして、全面禁漁しか道がないのかどうか。全面禁漁とせず、例えば産卵期のみ禁漁とするようなことも考えられます(条例の改正が必要ですが)。キャッチ&リリースは制度上、無理なようですけれど、ここまで極端にイトウが減ってしまった尻別川に限れば、あまり問題はないかも知れません。

保護管理計画の策定はぜひ必要で、例えばオビラメ復活30年計画のような長期展望とともに、常にモニタリングを続けながら、リアルタイムに計画を見直しながら進める体制を調えるべきでしょう。

この条例は確かに「規制」です。しかし、釣り人のみなさんには、個体群指定のやり方で「遊漁を続けながら保護もできる」という点をぜひご理解いただきたいと思います。とくにイトウ資源の少ない尻別川での条例適用なら、大きな障害にはならないのではないでしょうか。また開発担当者のみなさんにも、これを開発規制とだけ受け取るのではなく、むしろ河川環境再編法ととらえて、ぜひ活用してほしいと思います。

この希少種保護条例をぜひ有効に使って、尻別川にイトウを増やしていきたいと思います。


2008年6月21日、ニセコ町民センターでの「イトウ保護連絡協議会2008リレーフォーラムChapter2尻別川のイトウを守るために/尻別川のイトウ保護政策を考える」での話題提供から。