尻別川統一条例を活用したイトウ保護政策推進のお願い

2011/5/7、2017/10/17

2011年5月7日

尻別川連絡協議会 御中

蘭越町長/ニセコ町長/倶知安町長/真狩村長/京極町長/喜茂別町長/留寿都村長

尻別川の未来を考えるオビラメの会
会長 草島清作
事務局長 吉岡俊彦
北海道虻田郡ニセコ町富士見65 電話 0136-44-2472

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。私たち「尻別川の未来を考えるオビラメの会」は、絶滅危機種イトウ(サケ科)の生息南限とされる尻別川で、イトウ保護活動を進めている市民グループです。ひごろより当会の活動にご理解とご協力を賜り、まことにありがとうございます。

 すでに報道などを通じて公表しておりますように、尻別川流域では昨春、およそ20年ぶりに野生イトウの自然産卵が確認されました。当会モニタリングチームの追跡調査で、これまでに、自然孵化したイトウ稚魚が産卵床から無事に泳ぎだし、順調に生育していることも確認されています。羊蹄山麓を周回する広大な尻別川流域で、現時点ではたった1カ所、イトウが自然繁殖に成功した非常に貴重な環境であり、当会はこのエリアの環境保護を最優先課題とし、地元のみなさまや関係各機関と連携しながら、さまざまな保護対策を進めているところです。

 さて、尻別川連絡協議会を構成する流域7カ町村および各議会におかれては、尻別川流域の環境保全を目的に、2006年に「尻別川統一条例」を制定なさいました。全国的に見ても先進的なこの流域条例を、尻別川の生物多様性のシンボルであるイトウ個体群の復元のために活用いただければ、当会にとってこれほど心強いことはありません。つきましては、貴重な尻別川イトウ個体群の復元に向けて、以下の3点について、ぜひご検討いただきますようお願い申し上げます。


1 繁殖期のイトウ保護について

 イトウに限らず、絶滅に瀕した野生生物の群れの復元を図る場合、繁殖環境の保全は最優先課題です。イトウは春の繁殖期を迎えると、本流から支流へと一斉に移動し、ペアを組んで産卵行動を取りますが、この時期の乱獲を防ぐことで、次世代のイトウを自然に増やせます。尻別川においても、統一条例の趣旨に基づき、尻別川連絡協議会のお立場から、遊漁者らに対して、繁殖時期のイトウ釣り自粛をぜひ呼びかけください。

2 イトウ保護の呼びかけについて

 地域の貴重な野生生物を保護するには、地元のみなさまのご理解とご支援が欠かせません。イトウは、尻別川の豊かな生物多様性のシンボルです。尻別川ならではの「地域自然資源」としてのイトウの存在価値を、地域のより多くのみなさまに理解いただけるよう、環境教育や啓蒙活動をぜひ推進ください。

3 イトウ保護条項の追記について

 尻別川の環境保護を目的とする統一条例のシンボルとして、ぜひ「イトウ保護条項」の追記をご検討ください。かつて「イトウ釣りのメッカ」と呼ばれた尻別川の原風景を21世紀の現代に取り戻すことができれば、本条例が目的とする「現在及び将来の町(村)民が川と共生し、健康で潤いのある生活を営むことができる良好な環境の創造」が果たされた証明となります。

 以上です。

 尻別川の貴重なイトウ個体群復元のために、ぜひお力添えいただきますよう、重ねてお願い申し上げます。

 今後ますますのご発展をお祈りしています。

敬具


2011年6月、尻別川統一条例にイトウ保護条項が加わることになりました。ニセコ町のサイトへ。