放流イトウのモニタリング活動
2009、2022/01/08
当会は国際自然保護連合「再導入と保全移植の指針」(2013)や、日本魚類学会「生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン」(2005)に準拠しつつ、2004年、最初の再導入実験河川として尻別川支流の倶登山川(後志管内倶知安町)を選択し、同年秋以降、尻別川産イトウ稚魚を標識(ヒレの一部切除)のうえ放流しています。
平行して、尻別川におけるイトウ絶滅要因の排除に向けて、2006年、イトウ稚魚放流河川=倶登山川で、イトウをはじめとする水生生物の自由な往来を妨げていると考えられる落差工(ダム)の改修を北海道に要望し、2011年3月までに、合わせて5基のダムに魚道が新設されました。
オビラメの会ニューズレター第34号(2010年6月)岩瀬晴夫「倶登山川第5号落差工魚道・その特徴と見どころ
当会は、この再導入実験の経過を観察するために、放流魚の定期的な追跡調査を継続しています。その結果、2012年5月11日、倶登山川流域で、2004年秋と05年春に試験放流した人工孵化イトウ(計3500尾、標識付き)のうち、少なくとも1ペアが、親魚となって自力で放流河川に回帰し、正常な産卵行動を行なったことを初めて確認しました。
オビラメの会ニューズレター第38号(2012年6月)イトウの再導入実験に世界で初めて成功しました/藤原弘昭「大願成就!標識イトウ産卵発見記」/川村洋司「オビラメ再導入実験成功の意義」
プレスリリース「絶滅危惧種イトウ(サケ科)の再導入実験に世界で初めて成功しました」(2012 年5月28日)
2019年5月には、倶登山川で「標識のないイトウ親魚の繁殖遡上」を初確認。再導入イトウが自然界で自力で世代交代できていることが確かめられました。
オビラメの会ニューズレター第50号(2019年6月)
山根敏夫「再導入第2世代野生魚を初確認」
イトウ稚魚を見分けるには?
尻別川産イトウ個体群の復活を目指すオビラメの会は、稚魚放流しているイトウたちの追跡調査活動(モニタリング)を進めています。研究者をリーダーとするモニタリングチームが定期的に生け捕り調査を実施しているほか、釣り師のみなさまから捕獲情報を収集しています。放流後のイトウたちが自然界で健康に成長できているかどうか、すみ場所として尻別川のどのような環境を選んでいるか、将来的に新たな世代交代が可能かどうか、といった未知の諸課題を、モニタリングによって科学的に解明できるからです。
追跡調査には、尻別川の釣り師のみなさまからの情報提供がとても役に立ちます。もし尻別川でイトウがヒットしたら、ぜひご一報ください。
【連絡先・お問い合わせ】
オビラメの会事務局 川村洋司 電子メール