オビラメ個体群復元のための稚魚放流を実施しました
2004/9/25、2017/10/17
当歳1789匹を尻別川水系倶登山川支流域に
当「尻別川の未来を考える オビラメの会」(草島清作会長)は2004年9月25日、同会として初めて、人工孵化で誕生させた尻別川産イトウ=オビラメの稚魚を尻別川水系に放流しました。
「オビラメ復活30年計画」に基づいて尻別川産イトウ個体群の保護・復元を目指している当会は、飼育中のイトウ親魚から得た受精卵を用いて2年連続して人工孵化に成功。平行して進めてきた尻別川水系の踏査を通じて、イトウ個体群の復元を図る最初の拠点となる「重点河川」として、倶知安町北部を流れる倶登山川(尻別川支流)水系を選定し、尻別川産イトウの「再導入」(絶滅した種、もしくは絶滅に瀕した種を再び同じ場所に定着させること)に備えてきました。
放流翌日(9月26日)の稚魚の元気な様子(撮影/鈴木芳房氏)
9月4日の「オビラメ勉強会/オビラメ稚魚放流のための作戦会議」で放流日程を決定した後、川村洋司会員(北海道立水産孵化場主任研究員)が放流稚魚全個体のチェックと標識つけ(アブラビレ切除)を行ないました。また江戸謙顕会員(学術振興会科学技術特別研究員)をリーダーとする調査チームが、あらかじめ放流地点付近の河川構造、魚類相・昆虫相・植生などを詳しく調査しました。いずれも、この放流がどのような成果を生むか、後にきちんと評価するために欠かせない事前準備です。
同時に、吉岡俊彦事務局長が放流地点周辺の農家や関係自治体機関を回って、放流計画を説明し、協力をお願いしてきました(下記文書)。
好天に恵まれた放流会当日は、会員を中心にマスメディアの記者も含め約20人が参加。倶登山川流域の数カ所に、合わせて1789匹のオビラメ稚魚を放流しました。
(オビラメニューズレター20号より)
▼地元・倶知安町の広報誌2004年12月号でも紹介されました(pdfファイル)
ひごろより「尻別川の未来を考える オビラメの会」の活動にご理解とご協力をいただき、たいへんありがとうございます。当会は2001年に「オビラメ復活30年計画」をスタートさせ、尻別川で絶滅の危機に瀕しているイトウ(サケ科、絶滅危機種)の野生個体群の復活を目指しています。住民のみなさまや北海道立水産孵化場をはじめとする研究機関のバックアップをいただきながら、昨年、今年と、念願の尻別川産イトウ(オビラメ)の人工繁殖に成功しました。この成果はマスコミでも大きく取り上げられ、地域のみならず全国のみなさまより祝福をいただいているところです。
さて、約5000匹の稚魚は現在、北海道立水産孵化場(恵庭市内)で手厚く飼育され、順調に成長しています。「オビラメ復活30年計画」は、人工孵化させた稚魚の一部を親魚まで育ててさらに人工繁殖をおこなうことで、尻別川産イトウの遺伝的資源を安全に確保する一方、尻別川におけるイトウ生息環境の改善を前提に、稚魚を尻別川に戻して野生状態で生育させることを目指しています。
当会のこれまでの流域踏査によると、尻別川流域はイトウが自力で繁殖できる環境はほぼ完全に失われてしまっています。ただし稚魚・幼魚期(生後おおむね3年程度)に限れば、生息可能と考えられるポイントが流域内にわずかに残存していることも当会の調査は明らかにしました。
イトウに限らず、野生動物の再導入(絶滅、もしくは絶滅に瀕した個体群を復活させるために、人工的に当該種の個体を移植すること)は世界的にも成功例が少なく、試みが成果を上げるまでには時間が費やされることが予想されます。こうした見通しのもと、当会はまず流域内にモデル地区を選定し、そこで再導入技術を確立するプランを立てています。
同計画に基づいて、当会はこのたび、北海道環境科学研究センター、北海道工業大学、北海道立水産孵化場、民間研究機関などの専門研究者諸氏のご指導とご協力を受けながら、イトウ稚魚再導入のための最初のモデル地区として尻別川支流倶登山川流域の複数のポイントを選定し、きたる9月25日、広く報道陣にも公開して、第1回のイトウ稚魚放流(放流数は計約1500匹)を実施することを決定しました。
すでに放流ポイント周辺で地形・河川構造・動植物相の事前調査をおこなっており、地域にお住まいのみなさまにも当会への活動計画へのご理解とご協力をお願いしています。また放流後にも稚魚やほかの自然環境の変化を追跡するモニタリングを計画しています。さらにこの再導入事業の意義を広くお知らせするためのミニシンポジウムの開催を今秋中にも計画しています。
尻別川の河川管理に携わられる各機関に対しては昨年暮れ、「倶登山川復元のための要望書」を提出し、それぞれご回答をいただきました。稚魚放流ポイントの一部は、河川構造物によって下流域と分断され、放流したイトウたちの生活の妨げとなる可能性がありますが、稚魚たちが親魚に成長する5~6年後までには、適切な方法によって問題を解決できるように知恵を絞っていきたいと考えています。
以上のような当会の活動に、今後いっそうのご理解とご支援を賜りますよう、会員一同、深くお願い申し上げます。
参考リンク
- オビラメ復活30年計画
- オビラメ人工孵化に成功
- 絶滅危機種イトウについて
- 尻別川のイトウ生息状況
- 尻別川の環境調査
- 国際自然保護連合「再導入のためのガイドライン」(渡辺勝敏氏のサイトにリンクしています)
- 尻別川産イトウ個体群(オビラメ)復元のための稚魚放流についてのお知らせ(報道各社向け資料、2004年9月17日付け、pdfファイル)
- 関係行政機関へのお知らせ(pdfファイル)
- 倶登山川踏査リポート(オビラメニューズレター19号)
- 倶知安町/後志支庁/小樽土木現業所への要望書と回答文書
- 「オビラメの会」ご支援のお願い
稚魚放流にご参加いただけるみなさまへ(9月25日当日のスケジュール)
午後1時 尻別川本流「富士見橋」右岸駐車場に集合、参加者に事前説明、最終打ち合わせ
午後1時30分 放流場所(尻別川支流倶登山川流域)に向けて出発
午後2時 放流場所に到着
午後3時15分 放流終了
午後3時30分 「富士見橋」に帰着、反省会、解散
上記スケジュールは、諸般の事情により直前になって変更される可能性があります。
イトウ放流地点の正確な位置は、当日午後1時から開く事前説明時にご説明します。放流地点でイトウ乱獲が起きる危険をできるだけ避けるため、どうぞご理解ください。
付近の農家の方へのご迷惑を避けるため、放流地点には数台のクルマに乗り合って移動します。
お問い合わせは放流前日までにこちらにお願いします。